【書評】池上彰の君たちと考えるこれからのこと 感想・レビュー

書評

池上彰さんは難しいことをわかりやすく伝えてくれるので、多くのことを知りたい自分にとってホントにいい先生になっています。

何冊か本を読んだことはあるんですが、今回読んだのは、日経新聞に連載されていた「池上彰の大岡山通信 若者たちへ」をまとめた書籍です。

大岡山とは、池上彰さんが教授を務めている東京工業大学のキャンパスがある場所のことです。

読んだ感想などを書いていきます。

リベラルアーツとは?

前に池上彰さんの本を読んだ時もこの言葉に出くわしました。

リベラルアーツとは元来、⼈間を良い意味で束縛から解放するための知識や、⽣きるための⼒を⾝につけるための⼿法を指します。 古代ギリシアで⽣まれたこの概念は、やがて古代ローマに受け継がれ、⾔語系3学(⽂法・論理・修辞)と数学系4学(算術・幾何・天⽂・⾳楽)で構成される⾃由7科(セブンリベラルアーツ)に定義されました。
引用:リベラルアーツとは | 桜美林大学

リベラルは、自由自由人にふさわしいという意味。
アートは、元々ラテン語のarsが語源となり、この意味には学問という意味もある。

職業や専門に直接結びつかない教養。また、そのための普通教育とも。

日本で適切な言葉は”教養”ですね。

専門性がないために、ないがしろにされがちだけど、実際は広い視野を持ったり人間力を高めたり生きるすべを身につけたりするのにとても重要な学問。

まさしく、様々なジャンルの知識が豊富にあり、教えるのが上手い池上彰さんにピタリと合った学問ともいえますね。

以前読んだ本も教養が得られるようなものでしたし、教養という言葉に弱くてまた手に取ってしまったのかもしれません。

この世界を俯瞰(ふかん)で見られる

池上彰さんの素晴らしさはここにあると思います。

もちろんご自身が見ている視点、景色だと思いますが、本を読むことでそんな池上彰さんが見ている世界を私達も体験することができます。

もっといえば、広い知識や見聞、教養がついていけば、池上彰さんと同じような視野で物事を見ることができるようになります。

もちろん相当の勉強量になると思いますが、そうなれたらきっと人生はもっと楽しく新鮮なものになりますよね。

本の構成や内容は?

大きなブロックが4つあり、その中に小さなブロックが10個ほど入っている構成です。

小ブロックの各テーマは興味を引くものばかりでどれも熟読してしまいました。

例をあげると、
・新聞のよさ、ネットの落とし穴
・ギリシャの強気な姿勢から、民主主義を考える
・選挙を楽しむアメリカ人

などです。

どうしてギリシャは財政破綻しても強気なのか?
どうしてアメリカ人は選挙を楽しむことができるのか?

など、ひとつずつ調べていくと時間がかかるようなテーマに対して簡潔に、明快に答えてくれています。

国際情勢や近代史、戦後日本の話や隣国韓国の話、アメリカ、ロシア、EUに至るまで、知りたいけど知れてない歴史やニュースをうまいことカバーしています。

なので、読んだあとに知的好奇心はかなり満たされます。

個人的に花粉症に興味があるのですが、木は成長期にしか二酸化炭素を吸収しないこともさらりと書かれており(学校では木は二酸化炭素を吸収すると教わる)、さらに私の知らなかった、伐採して燃やした場合は樹木の中にあった二酸化炭素は放出されてまうという事実もとても勉強になりました。

こう書いているとまるで先生に授業を受けている学生みたいですね。

先生・池上彰

あながち間違いではなくて、学生としても若い人たちの先生であると同時に、社会人になって知らないことを再度勉強したいという、私のような大人に対しても先生という存在になっているのが池上彰さんかと思います。

本の中にも講義中の学生達とのやり取りも書かれていて、大学ってこんなに活気があって刺激のある場所なんだなと再度大学に行きたくなりました。

本の中には若干、東京工業大学の宣伝も入ってますが、それを差し引いたとしても、今を生きる人達が知りたいことが詰まっていて、読んだ後に十分な教養が身につく本だと思います。

また新しく知りたくなるテーマも出てきますしね。

勉強に終わりはない、そして、学ぶのに遅すぎるということはない、ですね。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。

私は完全に愚者なので、この本を読んで歴史ももっと深掘りしたいと思いました。総じておすすめです。